音楽 下里豪志ピアノリサイタル

相沢あやの

2017年01月30日 13:07

下里豪志ピアノリサイタル(下里豪志後援会主催)が20日、那覇市のパレット市民劇場で行われました。故郷沖縄への凱旋とあって、チケットは前売り当日共に完売。ブラームスやリスト、ラフマニノフらに加え、アンコールでは「涙そうそう」が演奏され、会場を埋め尽くした約400人の聴衆を沸かせました。

私が下里さんの演奏を初めて耳にしたのは、6、7年ほど前のこと。
個人的に、名前というのはやっかいなものだ、と感じさせられることがここ数年多くなっているのですが、セーラー服をまとった下里さんは、その頃から堂々としていたように憶えています。出会いは、琉球新報音楽コンクール。審査会から表彰、入賞者演奏会までを直接取り仕切る担当者だった私は、受験票に書かれた名前と出で立ちとを思わず見比べてしまったものです。

『繊細さの中に、一つ一つの音をしっかりと奏でている感じがオリジナリティーだなぁ』。
審査会で進行役をこなす傍ら、当時の私が感じた下里さんの印象です。他にも弦楽、声楽、管・打楽器と全部で4つの部門があり、県内新人の登竜門と呼ばれるコンクールです。琉球新報社の担当とは言え、ど素人の私の口からはそんな感想はとてもとても、つぶやくことすらできなかったのですが審査員のお一人に伺ったところ「やっぱりタッチが(独自)、ね」とのことでした。見事、第44回コンクールで1位を獲られ「ほらね~!」と勝手に鼻高々したものです。

上野学園大学音楽学部音楽学科演奏家コースに4年間、特待生として在籍。下里さんは確実に着実に大きくなって、パレット市民劇場のスポットライトを浴びていました。クラッシックコンサートというと、咳はもちろん、座席のきしみすら許されないような張りつめた緊張感の中で行われることが多いのですが、20日のリサイタルは観客全員が音楽家・下里豪志の応援団。「どんな服着て出てくるのかねぇ~」「あんな難しい曲、よく弾けるさぁ。すごい!」などの会話も漏れ聞こえる“アットホーム”という言葉がぴったりの雰囲気の中、観客と演奏家とが一体となり、約2時間が瞬く間に感じられる聴きどころ満載の演奏会が繰り広げられました。